最近、外食すると「おっ、また少し高くなったな」と感じることが増えました。インフレの波が居酒屋メニューにも押し寄せていますが、okuriru.comの開発の息抜きにビールと焼き鳥を頼むとき、ふと「この価格を維持している裏側はどうなっているんだろう」と考えるのがバリュー投資家の性です。
今回は、「てけてけ」や「the 3rd Burger」を展開するユナイテッド&コレクティブ(3557)の財務諸表と対話してみました。
外食の「手作り」と「工場生産」の黄金比
ユナイテッド&コレクティブは、首都圏を中心に飲食店の直営およびフランチャイズを展開する企業です。売上の約80%を占めるのが、鶏料理居酒屋の「てけてけ」。他にも「the 3rd Burger」などを運営しています。
同社の最大の勝ち筋は「PPM戦略」(Preparation Process Management:調理工程管理戦略)にあります。これは、一律のセントラルキッチン化でも、一律の店舗手作りでもなく、「どの作業を店舗に残し、どの作業を自社工場に譲るのか」を緻密に管理するハイブリッドシステムです。
例えば、「てけてけ」の看板商品である「正直塩つくね」は、タイの外部工場でミンチから急速冷凍までを一貫加工し、店舗では串打ちと焼き上げのみを行います。一方で、鮮度と香りが命の「ど根性串」(ねぎま串)は、あえて効率化せず、毎日店舗で一から仕込む「店内仕込み」を徹底しています。
外食ならではの圧倒的な美味しさと、工場に匹敵する高い生産性を両立させている点が、同社の強力な競争優位性です。
分析:成長性と効率性
では、そのビジネスモデルが数字にどう表れているか見てみましょう。
| 指標 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,168.6百万円 | 6,492.1百万円 | 6,460.7百万円 |
| 営業利益 | 52.9百万円 | 115.6百万円 | △15.9百万円 |
| 当期純利益 | △91.1百万円 | 59.8百万円 | △227.5百万円 |
| 売上高純利益率 | -1.5% | 0.9% | -3.5% |
2026年期の売上高は前年同期比0.5%減と微減しました。継続的な価格改定(値上げ)の影響などにより、客数が前年を下回るなど集客に課題が生じたためです。
さらに厳しいのが利益面です。サービスの肝である店舗の「QSCレベル」(品質・サービス・清潔さ)向上を目的とした人員体制の強化を進めたことで、人件費率が上昇し、営業利益は赤字に転落しました。加えて、収益性の低下した店舗の帳簿価格を切り下げる減損損失(236.9百万円)を特別損失として計上したことが決定打となり、最終赤字となっています。
バリュエーション分析:オーナー利益
次に、会計上の見栄えではなく、本当のキャッシュ創出力を見るためにオーナー利益を確認します。
(※シミュレーション条件:推定株価540円、期待利回り5%)
| 指標 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|
| オーナー利益 | 23.5百万円 | 30.9百万円 | △330.6百万円 |
| オーナー利益価値 | 469.7百万円 | 618.3百万円 | - |
営業赤字と減損損失の影響をモロに受け、2026年のオーナー利益もマイナスに沈んでいます。現状の業績だけを見ると、安全マージンがあるとは言いにくい状態です。
しかし、この決算には「裏の顔」があります。同社は新株予約権の行使によって得た資金を元手に、過去の営業赤字の蓄積である繰越欠損金約29億円を一掃(欠損填補)する「減資」を断行しました。
これにより、かつて同社を苦しめていた債務超過リスクは完全に払拭され、自己資本比率は12.7%まで回復しました。財務諸表の「見栄え」が劇的に綺麗になり、銀行融資や新規投資を受けやすい正常な状態へと生まれ変わったのです。まさに、執念の「超・財務お掃除」と言えます。
財務の安全性:ネットキャッシュ
下値耐性を確認するために、ネットキャッシュの推移を見てみましょう。
| 指標 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|
| ネットキャッシュ | △2,241.4百万円 | △1,696.8百万円 | △1,366.6百万円 |
依然として借入金の方が多い(ネットデット)状態ではありますが、ピーク時のマイナス22.4億円から、毎年着実にマイナス幅を縮小させています。有利子負債の返済が進んでおり、金利負担の軽減や財務リスクの低減に繋がっている点はポジティブな材料です。
リスク:人件費と希薄化のジレンマ
投資判断において、楽観論だけで終わらせるわけにはいきません。以下のリスクには注意が必要です。
- 人手不足と労務費上昇 QSC(サービスの品質)を高めようと人員を配置すると人件費が膨らみ赤字になり、減らすと顧客満足度が下がり客離れに繋がるという、外食産業共通のジレンマに直面しています。
- 既存店舗の収益力低下 2026年期に計上された2.36億円の減損損失は、既存店舗の一部が当初想定した投資額を回収できないほど収益力が落ちているシグナルです。
- 株式の希薄化懸念 財務基盤の健全化をもたらした原資は、新株予約権の行使(新規の株式発行)です。これは既存株主にとっては「1株あたりの価値が薄まる」ことを意味します。今後もこの資金調達手段に依存し続けられるかは不透明です。
投資家としての結論
結論として、いま私がユナイテッド&コレクティブに投資するかと問われれば、「今は様子見だが、ウォッチリストには入れておく」という判断になります。
財務の「お掃除」が完了し、純粋に本業で稼いだ利益が内部留保として積み上がるスタートラインに立てたことは非常に高く評価できます。しかし、肝心の「本業の稼ぐ力」の証明はこれからです。
客数の回復と、PPM戦略によるコストコントロールが再び噛み合い、オーナー利益が安定してプラス圏に浮上してきた時が、バリュー投資家として本格的に動くタイミングになりそうです。
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