OKURIRU ブログ

共栄タンカー(9130):船売却で利益50億?PBR0.5倍割れの「お宝」海運株の正体を読む

1分で読めます
共栄タンカー(9130):船売却で利益50億?PBR0.5倍割れの「お宝」海運株の正体を読む

最近、週末に福岡の温泉に浸かりながら、okuriru.comでスクリーニングをするのがささやかな楽しみになっています。

海運株と聞くと「市況の波が激しくて怖い」というイメージを持たれがちですが、EDINETのデータを掘っていくと、「安定して稼ぎつつ、実物資産をたっぷり抱え込んでいる銘柄」に出会うことがあります。

今回は、日本郵船グループに属する外航海運会社、共栄タンカー(9130)のデータを読み解いていきます。2025年に純利益が突如50億円を超えた理由と、その裏に隠された「お宝」の正体に迫ります。

日本郵船グループの信用力と長期契約

共栄タンカーは、主に大型原油タンカー(VLCC)などの船舶を保有し、自社で運航したり他社に貸し出したりして収益を上げるタンカー専業会社です。

この会社の最大の強み(堀)は、「日本郵船グループという強力なバックボーンと長期貸船契約」にあります。

海運市況は運賃の変動が激しいですが、主力であるVLCCは長期契約を主体としており、スポット運賃の乱高下に巻き込まれにくい構造を作っています。大手荷主との安定した取引基盤が、手堅いキャッシュフローを生み出しているわけです。

分析:成長性と効率性

まずは直近の売上高と純利益の推移を見てみましょう。

指標202320242025
売上高(億円)142.7141.8151.6
純利益(億円)8.81.551.1
売上高純利益率(%)6.11.033.7

目を引くのは、2025年の純利益「51.1億円」です。前年の1.5億円からとんでもない急増を見せています。

有価証券報告書の「経営成績の概要」を読み込むと、この利益の大部分はVLCC「TOHSHI」の売却に伴う「特別利益」であることがわかります。つまり、船という資産を売ったことで得た一過性の利益です。

ただし、本業がダメなわけではありません。好条件での契約更改や円安の寄与により売上高はしっかり伸びており、さらにVLCCの耐用年数変更による減価償却費の減少もあって、営業利益ベースでも前期の赤字から13.7億円の黒字へと回復しています。

バリュエーション分析:オーナー利益

では、船の売却という一時的なイベントを除いた「本当の稼ぐ力」はどうでしょうか。

(※シミュレーション条件:推定株価1,500円、期待利回り5%)

指標202320242025
オーナー利益(億円)47.4320.6337.91
オーナー利益価値(億円)948.64412.61758.22

設備投資などを差し引いたオーナー利益は、2025年実績で約37.9億円。これを期待利回り5%で割り戻した「オーナー利益価値」は約758億円となります。

共栄タンカーの現在の時価総額は約115億円程度です。市場は「売却益は一過性のもの」と冷めて見ているかもしれませんが、本業が稼ぎ出す安定したキャッシュフローの価値に対して、株価は明らかに低い水準に留まっています。

財務の安全性:ネットキャッシュ

次に、バリュー投資家として絶対に見逃せない下値耐性(安全マージン)を確認します。

指標202320242025
ネットキャッシュ(億円)-460.87-434.17-404.04
正味流動資産比率(%)-401.7%-378.5%-352.2%

あれ、ネットキャッシュが大幅なマイナスじゃないか」と驚くかもしれません。

実はこれ、海運業特有の構造です。巨額の資金が必要な船舶を建造するため、多額の有利子負債(借入金)を抱えているため、流動資産から負債を引くとマイナスになってしまいます。

しかし、B/S(貸借対照表)全体を見ると景色が変わります。同社は船舶という巨大な実物資産を背景に、「約250億円の純資産」(自己資本)を持っています。自己資本比率も32.4%と海運業としては標準的で、決して財務が危機的なわけではありません。

純資産250億円に対して、時価総額が115億円。PBR(株価純資産倍率)は0.5倍を割る水準です。これは「今すぐ会社を解散して船を全部売ったら、株価の2倍以上の価値がある」という極端な資産割安状態を意味します。

潜むリスク:巨額投資と市況の波

もちろん、安いまま放置されているのには理由(リスク)もあります。

  1. 環境規制への対応 脱炭素化に向けて次世代燃料船への転換が求められており、これには巨額の設備投資が必要です。技術選定の成否が、長期的なキャッシュフローを左右します。
  2. 燃料高と金利上昇 インフレによる運航経費の増加や、多額の借入金に対する利払いの負担増は、ダイレクトに利益を圧迫します。
  3. 海運市況の変動 長期契約主体とはいえ、契約更改のタイミングで市況が悪ければ、条件が悪化するリスクは避けられません。

投資家としての結論

バリュー投資家として共栄タンカーを見ると、「実物資産の裏付けがあり、本業のキャッシュ創出力もあるのに、市場から放置されているお宝銘柄」に見えます。

ただ、すぐに飛びつくかは別問題です。純利益の「51億円」という見栄えの良い数字は船の売却益であり、来期以降も続くものではありません。

私が投資判断を下すなら、以下のポイントを待ちたいと思います。

  • 利益の急増を受けて、会社側が「株主還元」(増配や自社株買い)にどう動くか。
  • 2025年8月や2027年3月に予定されている新造船が、実際の収益にどう寄与してくるか。

「安くて良い会社」であることはデータが示しています。あとは、経営陣がその価値をどう株主に還元していくか、その姿勢を見極めてからでも遅くはないでしょう。


共栄タンカー株式会社 の「あるべき株価」をシミレーションしてみませんか?

記事で紹介した共栄タンカー株式会社の財務データ、もっと深く分析したいと思いませんか?

okuriru.comなら、バフェット流の「オーナー利益」に基づいた共栄タンカー株式会社のシミュレーションが可能です。あなたが求める期待利回り(ハードル・レート)を入力するだけで、独自の理論株価を瞬時に算出します。

👉 共栄タンカー株式会社の理論株価を計算する

「この株、今の価格は妥当?」という疑問を、自分だけの基準で解消しましょう。財務データのCSVダウンロードも、もちろん可能です!


タグ