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「印刷」の殻を破る老舗企業。共同印刷(7914)の隠れた稼ぐ力と資本政策をバリュー投資家が読む

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「印刷」の殻を破る老舗企業。共同印刷(7914)の隠れた稼ぐ力と資本政策をバリュー投資家が読む

こんにちは。okuriru.comの開発者です。

最近、仕事で送られてくる公的な通知書やICカードをしげしげと眺める機会がありました。ペーパーレス化が進む世の中ですが、高いセキュリティが求められる領域では、まだまだ「紙」や「物理カード」の信頼性が健在です。

そんな中、ふと気になったのが日本を代表する総合印刷会社の一つ、共同印刷株式会社(7914)です。「印刷会社」と聞くと、出版不況の煽りを受けて苦しいイメージが先行しがちです。実際に同社の「情報コミュニケーション」部門(出版印刷など)は赤字に苦しんでいます。

しかし、財務データを読み解くと、その裏で着実にキャッシュを生み出している「隠れた稼ぎ頭」の存在と、経営陣の並々ならぬ構造改革への意志が見えてきました。今回はバリュー投資家の視点から、同社の本当の姿に迫ります。

ビジネスモデルと勝ち筋:「印刷」から「サービスベンダー」へ

共同印刷の現在の利益の源泉は、もはや伝統的な出版印刷ではありません。同社の本当の「勝ち筋」は、以下の2点に集約されます。

  1. 情報セキュリティ領域の強固な基盤 官公庁や金融機関向けのBPO(業務受託)やICカードなど、高い信頼性とセキュリティが求められる分野で強みを発揮しています。これらは参入障壁が高く、安定した収益基盤となっています。

  2. 高度な材料加工技術 日用品・食品メーカー向けのラミネートチューブ(歯磨き粉や化粧品など)や食品パッケージにおいて、高いシェアと技術力を持っています。私たちの生活に密着した分野で、着実に利益を稼ぎ出しています。

つまり、現在の共同印刷は単なる印刷会社ではなく、「情報・資材のサービスベンダー」へと構造改革を進めている真っ只中にあるのです。

分析:成長性と効率性

まずは、近年の売上と利益の推移を見てみましょう。

指標202320242025
売上高(億円)933.6969.9999.8
純利益(億円)12.515.033.1
売上高純利益率(%)1.3%1.5%3.3%

2025年3月期は、売上高が約1,000億円に到達し、純利益も前期比121.3%増の33.1億円と大きく伸びています。

ただし、ここでバリュー投資家として注意すべき点があります。この純利益の急増は、政策保有株(投資有価証券)の縮減に伴う「売却益」(約28.2億円)が大きく寄与しているという事実です。

とはいえ、本業の儲けを示す営業利益も前期比47.8%増の23.3億円と好調です。原材料高や人件費の上昇という逆風の中で、価格転嫁の進展やBPO案件の増加によって、しっかりと本業でも利益を伸ばしている点は高く評価できます。

バリュエーション分析:オーナー利益

次に、会計上の利益ではなく「本当の稼ぐ力」であるオーナー利益を確認します。

(※シミュレーション条件:推定株価1,500円、期待利回り5%)

指標202320242025
オーナー利益(億円)26.037.5142.8
オーナー利益価値(億円)520.0750.2856.0

驚くべきことに、純利益を大きく上回る水準でオーナー利益を創出しています。2025年のオーナー利益は42.8億円に達し、これを期待利回り5%で割り戻した「オーナー利益価値」は856億円となります。

試算時価総額が約486億円であることを考えると、現在の株価水準には十分な「安全マージン」が含まれていると言えそうです。出版部門の赤字という分かりやすいマイナス要因の裏で、これだけのキャッシュ創出力が隠れているのは、まさにバリュー株の醍醐味です。

財務の安全性:ネットキャッシュ

下値耐性を確認するため、ネットキャッシュの推移を見てみましょう。

指標202320242025
ネットキャッシュ(億円)-114.21-63.07-35.57
正味流動資産比率(%)-96.4%-55.7%-7.3%

ネットキャッシュはマイナス圏で推移していますが、その赤字幅は年々急速に縮小しています。これは、前述の強力なキャッシュ創出力に加え、政策保有株式の売却などによって資産の現金化が進んでいるためです。

営業キャッシュフローも67億円と潤沢であり、設備投資をこなしつつ借入金の返済や自己株買いを実行できるだけの財務的な強さを持っています。

リスクと懸念点

もちろん、楽観視できないリスクも存在します。

一番の懸念は、「既存事業(出版印刷)の縮小ペース」が「構造改革(BPOや新資材の育成)のスピード」を上回ってしまうリスクです。デジタルシフトを進めてはいるものの、出版部門の利益化には至っておらず、この出血をいかに早く止めるかが鍵となります。

また、官公庁などのBPO案件には一過性のものが含まれる可能性もあり、来期以降もこの好調な受注を維持できるかは注視が必要です。継続的な賃上げや原材料費の高止まりに対して、適切な価格転嫁を続けられるかも利益率を左右する重要なポイントです。

投資家としての結論

結論として、共同印刷は「不人気な業態に隠れた優良なキャッシュマシン」として、投資妙味があると感じています。

私が特に評価しているのは、経営陣の「資本政策への強い意志」です。2027年度までの中期経営計画で「DOE 3.5%」を目安とした安定的な株主還元を明記し、実際に政策保有株を売却して自己株買いを進めています。PBR1倍割れを是正し、企業価値を向上させようとする本気度がデータから伝わってきます。

市場はまだ「斜陽産業の印刷会社」というレッテルを貼っているかもしれませんが、着実にキャッシュを稼ぐ情報セキュリティ事業と手厚い還元姿勢を考慮すると、現在の評価は低すぎると考えます。

構造改革がさらに進み、情報コミュニケーション部門の赤字が止まれば、市場の見方は一変するはずです。その転換点を待ちながら、厚い利回りを受け取って気長に保有する。そんなバリュー投資の王道を行くような銘柄として、引き続き動向をウォッチしていきたいですね。


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