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日揮HD(1963)の「増収赤字」は買い場か?名門エンジニアリングの苦悩と希望

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日揮HD(1963)の「増収赤字」は買い場か?名門エンジニアリングの苦悩と希望

こんにちは。福岡で妻と子育てに奮闘しながら、個人開発者としてokuriru.comを運営している「中の人」です。

最近、近所のスーパーで野菜の値段を見るたびに「インフレだなぁ」とため息をついているのですが、株式市場を見渡してもインフレの波に飲み込まれて苦しんでいる企業がちらほら。今回取り上げる日揮ホールディングス (1963) も、まさにその代表格かもしれません。

「日揮」といえば、世界中のプラント建設を手掛けるエンジニアリングの超名門。しかし、その決算書を開いてみると、そこには「過去最高売上」という華々しい数字と、「2期連続の営業赤字」という衝撃的な現実が同居していました。

「えっ、あんなに忙しそうなのに赤字なの?」

そう思ったあなた、鋭いです。実はこれ、エンジニアリング業界が抱える「構造的な病」が如実に表れているんです。今回は、okuriru.comのデータ分析機能を使って、この「増収赤字」の正体を暴きつつ、その奥に隠れた「キラリと光る希望」についても語っていきたいと思います。

1. 成長性・効率性分析:作れば作るほど赤字になる?

まずは、過去4年間の業績推移を見てみましょう。青い棒グラフ(売上高)は右肩上がりで、2025年には8,580億円と過去最高を更新しています。しかし、折れ線グラフ(利益率)は地面に潜り込んでいます。

指標2022202320242025
売上高(億円)4,2846,0688,3268,581
純利益(億円)-356307-78-4
売上高純利益率-8.3%5.1%-0.9%-0.0%

なぜ「繁忙貧乏」に陥るのか?

有価証券報告書を読み込むと、その原因は明白です。「工事損失引当金」。これは、「このプロジェクト、最後までやるとこれだけ赤字になります」という金額を前もって計上するものです。

海外の巨大プラント建設は、受注から完成まで数年かかります。数年前に「これくらいで出来るだろう」と見積もって固定価格で契約した案件が、その後の世界的なインフレで資機材費や人件費が高騰し、大赤字プロジェクト(デスマーチ)に変貌してしまったのです。特に台湾やサウジアラビアの案件でつまづき、売上が増えれば増えるほど、赤字も膨らむという皮肉な結果に。

しかし、経営陣も手をこまねいているわけではありません。社長交代を発表し、不採算案件の処理に全力を挙げています。 B/Sを見ると、この引当金は2024年の480億円から、2025年には357億円へと減少傾向にあります。「膿(うみ)」は徐々に出し切られつつある、とも見て取れます。

2. ビジネスモデルの深掘り:実は「素材メーカー」でもある

「日揮=プラント建設」というイメージが強いですが、実はもう一つの顔があります。それが「機能材製造事業」です。

建設部門が赤字で苦しむ横で、この部門はしっかりと利益を稼ぎ出しています。

  • 触媒: 石油精製に不可欠な素材
  • ファインセラミックス: 半導体やEV(電気自動車)向けの放熱基板

特に注目なのが、宮城県富谷市に新工場を建設中の「高熱伝導窒化ケイ素基板」。これはパワー半導体に必須の部材で、EVの普及とともに爆発的な需要増が見込まれています。売上規模はまだ建設部門の10分の1程度ですが、利益率の高さと成長ポテンシャルは計り知れません。「巨大な赤字建設会社の中に、ピカピカの成長素材メーカーが埋まっている」。これが、日揮の本当の姿なのかもしれません。

3. オーナー利益分析:キャッシュフローの真実

さて、会計上の利益は赤字ですが、現金の動き(キャッシュフロー)はどうなっているでしょうか? okuriru.com独自の指標「オーナー利益」で見てみます。

指標2022202320242025
オーナー利益(億円)-431184-218-101
オーナー利益価値(億円)-8,6283,689-4,353-2,016

※期待利回り5%で算出

グラフを見ると、オーナー利益(企業の真の稼ぐ力)はマイナス圏に沈んでいます。しかし、ここで重要な補足があります。会計上の「営業キャッシュフロー」を確認すると、2025年はプラス467億円なんです。「えっ、オーナー利益はマイナスなのに?」

これは、将来の成長のための先行投資(特に機能材事業への設備投資)を積極的に行っているため、計算上のフリーキャッシュフローが圧迫されている側面があります。つまり、単にお金が無くなっているわけではなく、「次世代の種まきにお金を使っている」状態とも解釈できます。本業のキャッシュフロー自体はプラスを維持しており、倒産リスクのような危機的状況ではありません。

4. ネットキャッシュ分析:鉄壁の財務要塞

最後に、財務の安全性を見てみましょう。ここが最大の安心材料です。

指標2022202320242025
ネットキャッシュ(億円)2,6582,6582,3842,256
正味流動資産比率47.8%50.2%44.9%42.4%

見てください、この積み上がった現金の山を。ネットキャッシュ(現金同等物-有利子負債)は約2,256億円。日揮の時価総額(約5,300億円)の4割以上が現金そのものということです。これを「PBR(株価純資産倍率)0.7倍」という指標と合わせて考えると、市場は「日揮の事業価値をほとんどゼロ(あるいはマイナス)」と評価していることになります。

さすがにそれは評価しすぎ(売られすぎ)ではないでしょうか? これだけのキャッシュがあれば、自社株買いで株価を支えることも、M&Aで新たな収益源を買うことも可能です。この「財務の岩盤」がある限り、長期投資家としては安心して「ターンアラウンド(業績回復)」を待つことができます。

まとめ:夜明け前が一番暗い

今の株価水準は、EPC事業への失望を織り込みきった状態に見えます。しかし、以下の3つのカタリスト(株価上昇のきっかけ)が控えています。

  1. 不採算案件の完工: 赤字プロジェクトが終われば、本来の利益体質に戻る。
  2. 機能材事業の躍進: EV・半導体向け素材が収益の柱に育つ。
  3. 株主還元: 豊富なキャッシュを使った増配や自社株買い。

「落ちるナイフをつかむな」という格言はありますが、ナイフが床に刺さって震えが止まったのを確認してから拾うのは、賢明な投資戦略です。日揮ホールディングスは、まさに今、その「震えが止まる瞬間」を探るフェーズにあるのではないでしょうか。

:これは投資の推奨ではありません。投資は自己責任でお願いします。でも、私はこの銘柄を監視リストの最上位に入れています)


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