「NTT、減益だってよ」
夕食の食卓で、公務員の妻がニュースを見ながら呟きました。「え、あんなに安泰そうなのに?」
我が家では「安定の象徴」として君臨していたNTT。私も、かつてAmazon株でジェットコースターのような日々を過ごし(そして売り抜けた資金で個人開発に勤しんでいるわけですが)、今は「夜ぐっすり眠れる株」としてNTTをポートフォリオの隅っこに置いていました。
それが、純利益21.8%減。金額にして約2,800億円が吹き飛んだ計算です。
「終わったな」と思ったそこのあなた。ちょっと待ってください。開発者としてコードのバグを追うように、この決算の「ログ(財務諸表)」を深掘りしてみると、ただの「減益」ではない、もっと巨大な 「構造転換の足音」 が聞こえてきました。
今日は、okuriru.comの開発者として、そして一人の投資家として、この「巨象のつまづき(に見えるもの)」の正体を暴いていきたいと思います。
1. ビジネスモデルの深掘り:通信から「IOWN」へ
NTTといえば「電話屋」あるいは「ドコモの親玉」というイメージが強いですが、決算資料の端々から漂うのは 「もう通信だけじゃ食っていけない」 という強烈な危機感です。
音声通話収入は毎年のように減り続けています。これは止めようがない時代の流れです。そこで経営陣が打ち出したのが、「IOWN(アイオン)」構想。
技術的な話をすると長くなるので、エンジニアっぽく一言で言うと 「今のインターネットの物理層(レイヤー1)を、電気から光にフルリプレイスする」 プロジェクトです。
- 消費電力 1/100
- 伝送容量 125倍
- 遅延 1/200
これが実現すれば、AIの学習コストも、データセンターの電気代も劇的に下がります。今回の決算で注目すべきは、SI事業(NTTデータなど)が好調で、減収分を補っている点。つまり、NTTは「土管屋(回線提供)」から「頭脳屋(ソリューション提供)」へ、そしてIOWNによって「土管そのものを革命する会社」へと進化しようとしているのです。
2. 財務の真実:数字は嘘をつかないが、隠すことはある
では、なぜ今回そんなに利益が減ったのか。財務諸表と「対話」してみましょう。
成長性・効率性分析
| 指標 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(億円) | 121,564 | 131,362 | 133,746 | 137,047 |
| 純利益(億円) | 11,811 | 12,131 | 12,795 | 10,000 |
| 売上高純利益率 | 9.7% | 9.2% | 9.6% | 7.3% |
売上高は順調に増えています(+2.5%)。しかし、純利益がガクンと落ちています(1兆円の大台ギリギリ)。
理由の一つは、地域通信事業(NTT東西)の利益率悪化。固定電話の維持コストが重くのしかかっています。もう一つは、「金融損益」の悪化。金利上昇や為替の影響で、前期の黒字から1,100億円もの赤字に転落しています。
ただ、ここで重要なのは、「本業で稼ぐ力(営業利益)」の減少は、将来への投資コスト(減価償却費増や人件費増)も含んでいるということ。 5年間で8兆円という凄まじい規模の成長投資をぶち上げている最中ですから、一時的な利益圧迫は「産みの苦しみ」とも言えます。
オーナー利益分析
ウォーレン・バフェットが重視する「オーナー利益(純利益 + 減価償却費 - 設備投資)」を見てみましょう。
| 指標 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|
| オーナー利益(億円) | 20,437 | 20,895 | 22,027 | 20,077 |
| オーナー利益価値(億円) | 408,731 | 417,896 | 440,543 | 401,543 |
※オーナー利益価値 = オーナー利益 ÷ 期待利回り(5%)
驚くべきことに、純利益が20%減っても、オーナー利益はほとんど減っていません(2兆円キープ)。これは、NTTの設備投資の多くが「減価償却費」として計上されているものの、実際にはキャッシュアウトを伴わない会計上の費用が多いため、キャッシュフローベースで見れば依然として「モンスター級の集金マシーン」であることを意味します。
財務の安全性(ネットキャッシュ)
| 指標 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|
| ネットキャッシュ(億円) | -81,292 | -84,344 | -88,108 | -87,812 |
| 正味流動資産比率 | -15.3% | -16.5% | -0.7% | -0.7% |
ネットキャッシュはマイナス8.7兆円。普通の会社なら即死レベルの借金ですが、NTTはインフラ企業。安定したキャッシュフローがあるため、これだけのレバレッジをかけても回ります。むしろ、低金利時代にしっかりと借金をして自社株買いや投資に回してきた経営判断は、ファイナンス的には正解でした。これからの金利上昇局面をどう捌くかが腕の見せ所です。
3. 投資家としての「本音」:リスクとリワード
隠れた最大のリスク:NTT法と政府保有株
今回、私がB/Sの数字以上に怖さを感じているのが、有報の「事業等のリスク」にもある 「NTT法改正と政府保有株の行方」 です。
現在、政府はNTT株の約35%を保有しています。防衛費増額の財源として、この**「5兆円規模の株」が市場に放出される可能性**が議論されています。もしこれが実現すれば、需給は一時的に崩壊します。どんなに業績が良くても、売りが殺到すれば株価は下がります。これが最大のダモクレスの剣です。
それでも「買い」なのか?
私個人の結論としては、「買い」 です。
- 割安すぎる: オーナー利益価値(40兆円)から借金(8.7兆円)を引いても、企業価値は31兆円。現在の時価総額(約13兆円)は、実力の半分以下に評価されています。
- IOWNへの期待: もしIOWNが世界標準になれば、NTTはGAFAMに次ぐテックジャイアントになるポテンシャルを秘めています。
- 株主還元の意志: 減益でも増配を維持し、自社株買いも継続する姿勢は、経営陣の「株価を意識している」という強いメッセージです。
「政府売り出し」のニュースで株価が暴落した時こそが、千載一遇のチャンスになるかもしれません。
結論
NTTは今、「眠れる巨象」から「走る巨象」へと脱皮しようとしています。その巨体が走る振動で、足元の利益は少し揺らいでいますが、向かっている方向(IOWN)は間違っていないはずです。
私は、この減益決算を見て、むしろ少しずつ買い増しを始めようと思います。もちろん、政府の動向をウォッチしながら、ですが。
okuriru.comを使って「億り人」を目指す旅は、こういう「みんなが悲観している時」にこそ、面白い道が開けるものなのです。
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